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罪と罰 2

慌てて立ち上がったあたしに、変わらぬ笑顔の類。

「久し振りだね、こんな場所で会うなんてね?」

「あ…うん。久し振り、元気みたいだね。此処で何をしてるの?」

「此処は俺のワイナリーだからね。牧野こそ何で此処に?」

「あたしは仕事」

何年も会ってないのに不思議と会話が続いた。
まるで、ブランクなんて無かったみたいに…。

聞けば高校卒業した年にこの土地を相続して、初めて訪れてから気紛れで葡萄園を続ける事にしてそうだ。

「やっと去年辺りからまぁまぁ飲めるワインが出来てさ、今年は期待出来そうなんだ」

「舌の肥えた類が言うんだから、いいワインなんだろうね」

俄然あたしはそのワインに興味が湧いた。
そんなあたしに気付いたのか、類がワイナリーを案内してくれる事に。

「あ!迎えのタクシー、どうしよう?」

「何処のタクシー?俺が断っておいてあげるよ。帰りは俺が送るから」

その言葉に甘えて、ワイナリーを回ってワインを試飲し、サンプルに何本かを分けて貰った後、ホテルへ送って貰った。


「夕飯一緒に食べない?」

「あ、うん。今日はありがとう。夕飯はあたしに是非ご馳走させてね」

類は笑って、あんたは相変わらずだねって言いながら乗ってきたスポーツカーを預けると、一緒にホテルへと入った。

ホテル内のレストランは雰囲気も良くて、料理も美味しかった。
類とも自然に話せて食後のデザート迄は和やかだった。

「どうして、俺達の前から居なくなったの?」

「…………………」

内心、とうとう来たと思っていた。

「鉄の女に負けたからかな」

「何で相談してくれなかったの?俺達じゃ頼りなかった?」

攻める口調ではないが、何処か悲しげな類に尽くしは胸が痛んだ。

「ごめんね、あの頃はあたしも一杯一杯で、優紀と和也君達を守る為には、ああするしか無かったんだ。けど、ずっと心が重かったよ。結局は逃げた訳だしね」

つくしの顔を見て類は、苦しかったのはつくしの方だったのだと改めて思った。
其れにあの頃は俺達も所詮は学生で力を持たない餓鬼だった訳で、つくしが頼れる筈など無かったのだ。

「いや、あんたは悪くないよ。あの時はあれが精一杯だったんだと、今なら理解出来る」

「類………ありがとう、ごめんね?」

「ククッ…そう言う所変わんないよね。久し振りに聞いたよ、あんたのその言葉」

ずっと胸に引っ掛かっていた彼等への不義理が少しだけ許された気がしていた。

「ああ、そう言えば此処へ来る機内で道明寺に偶然会ったよ。見違える程大人になっててビックリしたよ」

「司と?何か話したの?」

「ううん、これと言って話さなかった。忙しそうだったしね」

「ふ〜ん、そうなんだ」

類は嫌な予感がしていた。
それが間もなく最悪な結果となろうとは、この時はまだ思いもしていなかった。


その頃、司はつくしと再会した事で過去だと思っていた事がそうでは無かった事に気付いていた。

「彼奴………平気な顔をしてたな。貧乏女が俺をコケにしてんのか?」

初恋が破れた事で、あれ以来司の心は闇に支配されていた。
人を愛する事が出来ない男になった司は、獰猛な牙を剥き出しにしてつくしに襲いかからんとしていた。





「ねぇ、司の事だけど彼奴変わったんだよね。だから気をつけなよ。何かあったら俺に連絡する事!いいね」

類の真剣な口調にあたしは驚きつつ、思わず頷いていたが、今更道明寺があたしに興味なんか持つ筈は無いと、この時は軽く考えていた。


翌日は、類に紹介して貰ったイタリアの農家を回って新しい取引先の開拓に勤しみ、帰路に着いた。


日本へ戻っで数日、会社で何やらザワザワと騒がしい。


「ねぇ、社内がざわついてない?」

「嫌だ、牧野さん知らないの?あの、道明寺司が来社してるのよ!」

「え!」


それから暫くして課長が慌ただしくやって来たと思ったら。

「牧野君!直ぐに会議室へ行ってくれないか?」

「あ、はい」

課長と共に会議室へ赴くと其処には道明寺が、まるでこの会社の主の様な顔をして、社長達から下へも置かぬ扱いを受けている所だった。

「牧野君、君は道明寺副社長の高校の後輩だそうだね。水臭いじゃないか、教えてくれてたら、なぁ?」

役員達が首振り人形の様に一斉に頷く様は、流石のつくしも内心で呆れる。

「……………………」


あたしはお愛想笑いで返すしか無かった。

道明寺は瞳は冷たいままだが、口調は優しく……。

「牧野は私の事を吹聴したく無かったのでしょう。もうそれくらいで……それより、先程のお願いですが?」


「勿論、我社としては願ったり叶ったりです。こちらこそ宜しくお願いします」

「其れではそう言う事で……」

そう言って、優雅に立ち上がると颯爽とその他大勢を引き連れて行ってしまった。

後に残されたあたしは何故この場に居るのか分からずに困惑するばかりだった。


道明寺が居なくなって、緊張が溶けたのか社長達は流れる汗を拭うのに必死で、あたし達の存在を忘れているみたいだ。

「いやぁ、あの若さであの貫禄とはね」

「それにしても男から見ても惚れ惚れする程の美丈夫でしたね」

「私なんて今でも足がガクガクしてますよ」

口々に道明寺の事を話す彼等に辛抱強く待っていると……。

「ああ、牧野君済まない。君に来て貰ったのは、今度からホテルメープルへ我社の製品を納入して下さるとの事で、その責任者に君をご指名なんだ。高校の先輩後輩と言うから、しっかり頼んだよ」

「……はい」

あたしは帰り際の道明寺のあたしを見る目に不安を感じていた。
あの目は再会して喜んでいる目では無かった。

そして、その感は奇しくも当たっていたのである。









コメント

No title

おはようございます。
今朝は快晴、明日からはしばらく雨が続くので
貴重な一日となりそうですね。

類は相変わらず穏やかで大人の貫録も身につけたようですね。
2人の間の空白の時間も少ない会話でしたが
埋められたようでホッとしました。
その反対に年ばかり重ねても中身は変わらないのは司。
さすが鉄の女の息子だけあります。
今後、つくしの身に何が起こるのか恐怖すら覚えます。

No title

キャットチビさん、おはようございます!
更新ありがとうございます。

司に会った直後、今度は類との出会い。
本当にこんなことが偶然にしても起こりうるなんて。
司との会話はあまりなかったけど、類とは自然に会話が弾んだようですねぇ。
食事もしたようだし。
でも、類は何となく嫌な予感が。
その嫌な予感は当たるようですねぇ。
あの司がつくしに勤務先に現れたようで。
この司、以前、手痛い思いをしてるから、復讐でも企ててるのかしら。
悪いのはあなたの母親なんだけど。
貴方とつくしを引き裂き、とんでもない仕打ちをしてるんだけど。
女嫌いになったかもしれないけど、つくしには罪はないんだけど。
困った状況に至りそうですねぇ(><)

今日は関西も快晴です。
気分爽快です。
明日からは雨の予報なんですが(><)
コロナ、又増えてきています。
本当に皆さん、慎重に行動をと願います。

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Re: こんにちは。

まあむさん
昨日の晴天が嘘の様に荒れ模様に……。
雨量も凄いみたいで、各地で被害が出ない事を祈るばかりです。 
都心での感染も増えていて、怖くて都内へは行けてません。
結局、ステイホーム状態なままです💦
つくしが辛い目に合わなければ、いいのですが……。
類は客観的に物事を捉えられる人でしたね、それに比べ司は……勘違いな恨みを持っているみたいで。
これからが心配です。

Re: こんにちは。

tiemさん
会う時は会ってしまうのですね……。
類との再会は心温まるものでしたが、司とは果たして。
何だか前途多難な予感が……。

昨日は洗濯物も乾いて気持いい一日でしたが、今日は打って変わって悪天候ですね。
水害が起きなければいいのですが……。
都内での感染は繁華街中心に増えていて、しかも20,30代中心です。
飲みに行くのはもう少し待った方がいいと思うんですけどね……。
感染後の後遺症が大変みたいで、掛からない事が肝心なのに。
お互い気をつけましょうね。

Re: こんにちは。

J**さん
昨日は洗濯干せましたか?  
暫くはシーツとかは洗えそうにもないので、私も沢山洗って干しました。

J**さんのお好きなネズミランド、いよいよですね。
チケットは取れましたか?
人数は半分でも混むのは変わりないみたですが……。

司は見当違いな恨みを抱いている様で、これからが心配です。
類が守ってくれるでしょうけど……。
辛い思いをしなければ良いのですが。

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プロフィール

キャットチビ

Author:キャットチビ
猫と暮らしつつ、4年前からヤフーブログで二次小説を書いています。
今回、ヤフーブログの閉鎖に伴い此方へお引っ越しして来ました。
宮を中心に書いていましたが、今は花男をメインにしています。
ポリシーはつくしが幸せになる事です!
古くからの方も新しい方も、此れからどうぞ宜しくお願いします🙇

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