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冬の花火 10

其々が飲み物を手に持ち口につけてからは、暫くは静寂な時が流れていた。

長年の友なので何も話さずとも気詰まりにはならない。

最初に口火を切ったのは総二郎だった。

「今更、つくしにアプローチってお前何を考えてんだ?」

「あれから20年だぞ?その間に何とか出来たんじゃないか?」

「問題はつくしだよね。彼奴の中にお前の存在はもう無いよ?」

三人三様に厳しい言葉を投げ掛けてくるのを司は黙って聞いていた。
こういう所も変わった点だろう。
昔ならとっくに手が出ている筈。

「その点じゃあ、俺は何も言えねぇ。だが、俺は今の彼奴が気になってるんだから、仕方ねぇだろ?」

「司はそうでもさぁ、つくしにしたら今更何だよね。結婚してる間、何度もつくしがオリーブの枝を差し出したのに、お前は無視し続けたよな?確かに最初に結婚した、させられたお前は気の毒だとは思うよ。でも、つくしだって高校生で子供を生んで、学校は止めて大検の資格を取って、旬を抱えながら大学へ行ってたんだよ?お前と変わらない苦労をしてきたんだ」

「あの頃は大変だったよな。タマさんが助けてくれてたけど、基本旬は母親ベッタリだったから彼奴、大学の授業以外は子育てに明け暮れててさ、青春なんて無かったぞ?」

「愚痴は言わなかったけどな。寝不足でフラフラになっても泣き言は言わなかった………」

彼等の一言一言が司を突き刺していた。
言われてみるまで、司はつくしの此までの苦労を考えてみた事もなかった。

自分の母親と同じ様に他人任せの子育てをして、優雅に暮らしていたとばかり思っていたからだ。


「司、何で一度だけでも自分の子供を見に来なかったんだ?」

あきらの質問に総二郎も類も、俺の答えを待っている。

「……さぁ、俺にも分かんねぇ。日本の事は俺にとっては遠い出来事で、関係のない事だと思ってたしな。自分の子供って言われても自覚ねぇし……」

「「「…………………」」」

その答えに三者三様で考え込んでいるようだが、誰も司の事を批判はしない。

「なぁ、司。記憶を無くしたのはお前のせいでも、況してやつくしのせいでもないけど、あの時お前が少しでも俺達の意見に耳を貸してたら少しは違ったんじゃないか?」

「結局、お前はあの時選択したんだよな。つくしも子供も要らないって………」

「何が言いたいんだ?」

「あの親子の手を離したのはお前だって言う事だよ。覆水盆に還らずだよ、司」

「なっ!類、じゃあお前はどうなんだ?つくしの事好きなんだろ今でも」

「ああ、好きだよ。今も昔もね。でも、俺達は男と女にはなれないんだ、その時期を逸したからね」

達観したその顔に、司は何も言えなくなった。

「俺は、俺は諦めねぇ!お前とは違う」

「うん、そうだね」

類の眼差しはそんは司を憐れんでいるようだ。

「だけど、司?お前はつくしの20年を知らないだろう?お前だって知らない過去がつくしにはあるんだよ。つくしにだって他の男と恋をした事もあるんだ」

其れは初めて聞く話で司は驚きを隠せない。


「………何時の事だ」

「お前と離婚して2年した頃だったかな」

「「………ああ、そうだったな」」

「誰だ?どんな男だ?」

「…其を聞いてどうするんだ?もう終わった事だし、お前には関係ないだろう?」

司は嫉妬に狂いそうだった。
拳を握り締めてその怒りを何とか逃そうと足掻いている。
そんな司を類は冷めた目で見詰めていた。

この20年の間、司が相手にした女は両手でも足りない程だ。
昔、あれほど女に潔癖だった男はあきらや総二郎よりも酷かった。

「…………………」

類の言葉に何も返せない。
其に、相手の事を話してくれるつもりもない事もその態度から察せられた。

「それで最初の話に戻るが、お前は本気でつくしにアプローチするのか?」

「ああ、そのつもりだ。失った時は取り戻せねぇし、俺も過去を振り返るつもりはない。此からの未来を彼奴と歩いて行きたいんだ」

「……女の30それも40に近い年頃は難しいぞ。昔みたいに押せばいいってもんでもないしな。辛抱強くなきゃ先には進めない」

「先ずは友達になる事からじゃない?」

正しく急がば回れの原理原則の通りだと内心で思いながらも、司は素直に彼等の意見に耳を傾けたのだった。


この日から数日後、昔の司からしたら考えられない程の紳士な態度でつくしに接する様になった。


「昼、何か食べたのか?まだなら、一緒に食べねぇか?」

「あ、ごめん。シェフの田中さんがお昼のお弁当を作ってくれてるから……」

「そうか………」

寂しげな声音に、ついお人好しの一面が顔を覗かせる。

「良かったらあんたの分も作って貰おうか?」

「おお、頼んでもいいか?」

「あ、うん。一人分増えても大丈夫だと思うよ」

こうして、東京に滞在する日は何故かお昼は一緒に食べる事が決まってしまった。

司は彼等のアドバイス通り、決して友達の枠から外れる事なく付かず離れずで、つくしの近くにいられる様にスケジュールを組み直した。


そんな二人の微妙な関係は数ヶ月続いて、司の39回目の誕生日の日がやって来た。

「相変わらず、パーティーするの?」

「いや……とっくにパーティーはしてねぇよ」

「誕生日プレゼントくれるんだろ?」

「う~ん、今更?」

乗り気じゃないつくしの返事に若干心折れながらも、司は精一杯おねだりしてみた。

「今年は、二人で食事でもしないか?其が俺に対するプレゼントだ。なぁ、いいだろ?」

「食事って……いつもしてるじゃん」

呆れる様にため息を吐くが、根負けしたのか渋々OKをくれた。


ホテルメープルに入っている予約の取りにくいフレンチの個室を予約して、財団の仕事を終えた彼女を屋敷迄迎えに行った。

その日の彼女はペールグレー色のニットの体のラインが出るワンピースを着ていて、母の楓の形見のダイヤのネックレスを付けていた。

其処には洗練された大人の彼女がいた。
俺は内心でドギマギしつつ、彼女の肘辺りを掴むとエスコートした。

フレンチの料理は流石の出来で、何れも美味しく最後に出された誕生日ケーキは甘さを控えたチーズケーキだった。

「お誕生日おめでとう」

「ああ」

予期してないプレゼントをバックから取り出して、渡されたので中を見ると、其処にはスーツの襟に付ける様にと、俺のネームをアレンジしたピンバッチが入っていた。


「……ありがとう。まさかプレゼントを貰えるとは思っても見なかった」

「そういうのなら、一つ位増えても困らないかと思って……」

以前、貰っていたプレゼントはあの日に開けてから、私用に使っている。


それとなく気付いていたのかと、嬉しくなる。
珈琲のお代わりを頼み、財団での話を聞く。
生き生きと楽しく仕事をしているのが、話し振りから分かる。

帰りの車の中でも話は広がり、つくしは物事や世相に通じていて、司は経営のヒント等をその話から貰う程だった。

「今日はサンキュー」

「ううん、此方こそ美味しい食事と会話をありがとう」

つくしが車から降りて屋敷の中へ消えた後でも、司は暫く見送っていた。

そして、つくしから貰った世界で一つだけのオリジナルのピンブローチをスーツの襟に付けると満足そうに笑っていた。

『ゆっくり行くさ………焦らずにな』




コメント

No title

おはようございます。
連休いかがお過ごしですか?
月末忙しかったので、色々と後回しにしてきたことが
溜まってきてしまい忙しくて、なかなかゆっくりできません。
もう少し時間の使い方を考えなきゃ…

司も諦めないと宣言するくらい本気のようで、
涙ぐましい努力をしてますね。
今回の誕生日はつくしと2人で幸せだったと思います。
同時に本来だったらずいぶん昔に叶うはずだったのに
バカなことをしたと後悔もしたでしょう。
彼女の良さを知るたびに、過去の恋愛事情も
ますます気になりそうですね。

No title

キャットチビさん、おはようございます。
更新ありがとうございます。

メンバーとの話し合い。
総二郎から鋭い指摘を。
今更ながら、何でつくしをだよねぇ。
20年間も全く無視していて、今頃になってと。
でも、以前の司なら、鉄拳がでしょうが。
でも、変わって来てるんだよねぇ。
年月を経て。
つくしが司の事を言い風には思ってはいない事は確かだよねぇ。
類はつくしとはもう・・
その時期を超えたと。
司が顧みなかった間につくしの状況を聞かされ、頭が痛いでしょう。
本当に知らん顔をしていたしねぇ。
その司が、再びつくしになんですから。
でも手強いと思うけどねぇ。
ここは、司のお手並み拝見かなぁ。
先ずは友達からスタートだねぇ。
食事に関しても、つくしと一緒に。
そんな中、司の誕生日。
つくしのアレンジした名前のピンバッジが。
嬉しいねぇ、司・・
本当に酷い事をしたにもかかわらず、プレゼントを渡すなんてありえないのに

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Re: おはようございます😊

まあむさん
そろそろ、大掃除も始めないとですが、お尻が上がりません(笑)
今日はお天気がいいので、洗濯を沢山しています。
時間配分は大切ですね。

失った時は戻らないので、つくしの過去の恋愛に嫉妬しても時間の無駄使いにしかなりませんね。
今年は自分の誕生日につくしの二人だけで過ごせて、先ずは第一歩?
頑張れ司!
コメントありがとうございます。

Re: おはようございます😊

timさん
恋にも季節があると言う事でしょうね。
一番いい時期を司は自ら手放しておきながら、今更足掻いても寒い冬の季節なので、カチコチに凍ってる?
ですが、優しいつくしで良かったよね。
過去のことは水に流してくれているのですから。
でも、それと恋愛は違うと言う事は分かっていた方が懸命でしょうけど。
コメントありがとうございます。

Re: おはようございます😊

J**さん
あんなに人の意見を聞かなかった司が……変われば変わりますね。
その努力が実れば良いけれど……。
大人になると恋愛はとってもハードルが高いですからね。
涙ぐまししい努力は必要かと。
コメントありがとうございます。

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プロフィール

キャットチビ

Author:キャットチビ
猫と暮らしつつ、4年前からヤフーブログで二次小説を書いています。
今回、ヤフーブログの閉鎖に伴い此方へお引っ越しして来ました。
宮を中心に書いていましたが、今は花男をメインにしています。
ポリシーはつくしが幸せになる事です!
古くからの方も新しい方も、此れからどうぞ宜しくお願いします🙇

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